ベーチェット病
ベーチェット病の原因はまだ良く分かっていません。この病気の基本的な異常は、血液の中の白血球の反応が非常に強いことと、炎症のために静脈がつまる(閉塞性静脈炎)ことが特徴です。この病気にかかりやすい遺伝的素質を持っている人もいます。
ベーチェット病の眼症状
目では、ぶどう膜炎と網膜血管炎が起こります。虹彩毛様体炎(前部ぶどう膜炎)は、充血や痛み・かすみ眼を起こしますが、炎症がおさまれば視力は回復します。炎症が眼底に起こる(網膜血管炎)と、炎症の起こった網膜が破壊されるため、炎症が反復すると徐々に視力が低下し、視野(物の見える範囲)が狭くなります。網膜の炎症を繰り返していると、10年後には半数近くの人が視力0.1未満となります。再発を繰り返すことも珍しくありません。合併症として白内障、緑内障、黄斑変性(物を見る網膜の中心部にきずがつく)、視神経萎縮などを起こすことがあります。
ベーチェット病の全身症状
静脈は全身のいたるところにあるため、多彩な症状が全身に出現します。
- アフタ性口内炎:唇の裏側・舌・歯ぐきなどに潰瘍ができる
- 皮膚の症状:
結節性紅斑(手足にしこりができる。赤く腫れて押すと痛い)皮下の血栓性静脈炎(皮膚の静脈が腫れたり、ぶつけていないのに皮下出血が出現し、おさえると痛い)にきびができやすい。皮膚の毛根が化膿する。かみそり負けしやすい。 - 陰部潰瘍:外陰部の粘膜皮膚に掘れた潰瘍ができて痛む
その他に関節炎、胃腸症状(腸管ベーチェット)、脳や脊髄の異常(神経ベーチェット)、全身の大きな血管の異常、肺・泌尿器の異常、難聴などを起こすことがあります。ベーチェット病は全身的な病気であるため、眼科だけでなく内科など、他の科でもいろいろな検査をする場合があります。これらの症状は一度に全て起きるのではなく、このうちいくつかの症状が出てきます。眼以外に症状の無いベーチェット病もあります。胃腸症状・大血管の異常・脳や脊髄の異常は生命にかかわることがありますので、眼以外に体の異常がありましたら、診察医にお知らせください。
ベーチェット病の治療
残念なことに、この病気を完全に治す治療法は現在のところありません。しかし、薬である程度まで病気をコントロールすることができます。治療にはいろいろな薬(コルヒチン、シクロスポリンなどの免疫抑制剤、ステロイド剤、レミケード Ⓡ などの生物学的製剤)が使われます。
- コルヒチン:炎症の発作予防に使います。ときに白血球減少、下痢、精子減少の副作用を起こします。
- シクロスポリン:リンパ球の働きを抑えて炎症を予防します。効果はありますが、腎障害・肝障害・胃腸障害・歯肉の肥厚・しびれ感などの副作用があります。
- ステロイド剤:点眼薬や結膜下注射などでよく使います。眼の症状が特に重症の人や、大血管や中枢神経の全身症状があるときにはステロイド剤を内服や点滴で使うこともあります。
- インフリキシマブ(レミケード Ⓡ ):最近多くの研究から、ベーチェット病の炎症にはTNF-αと呼ばれる体内物質が深く関わっていることが分かってきています。レミケード Ⓡ はTNF-αにくっついて働きを抑え、またTNF-αを作っている細胞をこわすことで炎症を抑える薬剤です。すでに関節リウマチやクローン病の治療薬として使われています。
使われる薬の中には強い副作用を持つものもあります。何か気になることがあれば医師にお伝えください。